活動報告(No.78):宮崎県延岡市での講演会(その1)
2025年(令和7年)10月23日(木)
宮崎県延岡市での講演会(その1)
10月18日(土)から19日(日)にかけて一泊二日で延岡市に行ってまいりました。
その際、18日には水泳でオリンピックに4回出場し、合計4個のメダルを獲得した競泳の松田丈志(まつだたけし)氏とそのコーチである久世由美子(くぜゆみこ)氏による演題『夢を夢で終わらせない水泳人生』、翌日には福井大学こどものこころの発達研究センター教授である友田明美(ともだあけみ)氏による演題『みんなで育児を支える社会に』という講話を聞く機会に恵まれました。いずれの講話も大変有意義なものであったことから以下に簡単ではありますが概要をご紹介します。なお、今回は松田氏・久世氏の講話をまずご紹介します。友田氏の講話については次回ご紹介します。
1⃣ 夢を夢で終わらせない水泳人生(松田丈志・久世由美子)
□ 松田選手は2004年のアテネ大会から4大会連続でオリンピックに出場し、北京・ロンドン・リオの3大会で合計4個のメダルを獲得、2016年に現役を引退しています。久世氏がコーチを務める東海スイミングクラブに4歳で入会し28年間、久世コーチの指導を受けています。久世氏は1979年に子供達に水泳の楽しさを教えたい、水難事故をなくそうと水泳好きの仲間達と東海スイミングクラブ(延岡市)を設立。「科学での指導も必要だが、心での指導と選手の感覚を大事にした指導を続けたい」がコーチングの哲学。
□ 久世コーチは、選手の強化だけでなく、挨拶、返事(大きな声で)、礼儀、感謝の気持ちを大切に、息の長い選手に育つよう心がけて、松田選手にもそのように指導した。
□ 久世氏によれば、松田選手は最初から目立った選手ではなかった。小学校まではそこまで練習させず、基礎、基本を重視した。特に水泳の前後に45分~60分ほどのウオーミングアップとクーリング(柔軟体操)を必ず行わせたとのことであり、これが生涯故障をしない体を作り上げた。
□ 松田氏はコーチの言葉で印象に残っているのは、全国大会でビリになったとき「あんたならやれる、丈志」と励ましてくれた言葉。久世コーチは、少しずつ目標をあげてクリアしたら褒め、また少し目標を高くするということを繰り返し、最終的には全国レベルまで育てていった。
□ 延岡という片田舎のスクールではあったが、久世コーチは強い意志と行動力で各国に出向き(松田氏も同行)最新の情報、トレンドを入手していた。当時世界一の選手がいたオーストラリアに出向き、松田選手も一緒に練習させ、その強さの秘密が世界一の練習量にあったことを認識した。このことが松田氏を一流選手に育てる一つの大きなきっかけとなる。
□ 松田氏は最初のアテネでは結果を残せなかった。オリンピックでメダルを取った選手と自分の違いは何かと研究し、その違いは「ON」と「OFF」の切り替えがうまい人が結果を残せていることに気づく。オリンピックという特異な世界では、技術というより心の切り替えが重要。また、それまでコーチに自分の意見を言えていなかったことに気づき、意見をいって納得した状態でオリンピックに臨むようになった。
□ 更に結果を残せる選手の特徴は、当然、自らの努力も必要であるが、チームや周りの人に応援される人になること。それにより周りの人達のサポートが得られ、それが更に自分の能力以上の力を発揮することに繋がる。
少し長くなりました。世界の頂点に立つには、まず基本・基礎の重要性と並外れた練習量、そして周りの人も応援したいと思うような人間性の獲得、それにより個人がもつ能力以上の力が発揮でき結果につながる。その原点は、人としてのありようで、あいさつ、返事、礼儀、そして感謝の心をもつこと、ということでしょうか。(了)