活動報告(No.52)
2025年(令和7年)5月26日(月)
行政視察(その1):長野県佐久市
5月21日(水)から2泊3日で長野県佐久市、長野市及び東京都福生市の行政視察を実施しました。このうち本日は長野県佐久市の行政視察の概要についてご報告します。
1 佐久市の概要及び調査目的
佐久市は長野県の中東部で群馬県との県境に位置し、人口は97,258人とほぼ薩摩川内市と同規模の都市である。佐久市は平均寿命全国1位である長野県でも有数の長寿率を誇る。また、佐久市は地域医療体制構築に先駆的に取り組んでいることでも有名である。今回の行政視察においては、この地域医療体制の取り組み状況について調査し薩摩川内市の医療行政の資とするものである。
2 佐久市の地域医療体制
佐久市の特徴的な地域医療体制の主な取り組みを以下にのとおり。
(1)地域完結型医療体制
佐久市の医療機関は病院7カ所、一般診療(開業医クリニックなど)86カ所及び歯科診療所57カ所である。このうち病院については、2014年から市内の医療機関の連携・機能分担により地域完結型医療体制構築のための取り組みを行っており、これにより佐久市内で一次救急医療(発熱、嘔吐等の軽傷)、二次救急医療(入院、手術、詳しい検査)及び生命の危機及び症状の重い患者に対応する三次医療まで完結する医療体制が構築されている。なお、薩摩川内市においては現在、市内所在の病院で役割を分担し連携する体制は明確には構築されておらず、また三次医療に対応できる病院もなくもっぱら鹿児島市内の大規模病院に依存している。
(2)在宅医療・介護の連携体制
医療や介護を受けながら地域で生活する高齢者は今後更に増える一方、少子高齢化の進行で家族介護力の減少、医療費・介護保険財政の逼迫が課題となっている。そのような状況のなか、佐久市においては適切な在宅医療と介護が一体的に提供されるための体制構築に努めている。具体的には医療・介護関係者の情報共有の支援、医療・介護関係者のスキルアップ研修、在宅医療・介護連携に関する相談支援、地域住民への普及啓発など医療行政として様々な活動を推進している。
(3)教えて!ドクター事業
本事業は、平成27年度から一般社団法人佐久医師会に委託し、小児特有の病気に対する自宅等での対応要領などの情報が冊子・ホームページ・アプリで無償適用されているものである。なかでもアプリは全国的な広がりを見せており、ダウンロード数は令和6年9月時点で約44.3万件と子育て世帯における需要の高さが見られる。主な掲載事項は、①症状とおうちケア、②小児特有の病気、③予防接種について、④災害時子どもを守るためになど。
3 所見等
薩摩川内市と同規模の人口を有する中規模都市である佐久市の地域医療体制構築に関する取り組みは、薩摩川内市に多くの示唆を与えるものである。特に地域完結型の医療体制の構築は、地元医師会を始めとする医療関係者の理解・協力なくしてなし得えないものであり、それを実現した佐久市の取り組みは大いに評価されるべきものと考える。佐久市の医療体制はこの地域完結型医療体制の構築により各医療機関の役割分担が明確化され、これにより一部の病院業務が逼迫するということがなくなっている。薩摩川内市にとっても今後の地域医療を考える上で佐久市の取り組みは大いに参考となる。
なお、全国的に医師不足が問題になっているが、佐久市においても医師不足は課題となっており、あらゆるルートを活用し医師の確保に取り組んでいるとのことであった。
次回は長野県長野市の行政視察結果についてご報告します。(了)