活動報告

活動報告(No.68):海上自衛隊にかかわる講話

2025年(令和7年)8月7日(木)

海上自衛隊にかかわる講話

昨夜(6日(水))、川内ホテルで開催された薩摩川内ロータリークラブの例会で海上自衛隊に関する講話を実施する機会をいただきました。会長は私の高校時代の同級生で、会長から普段聞くことのできない自衛隊のよもやま話をしてもらえないかと以前から頼まれていました。
海上自衛隊にかかわる話といっても現状の活動状況始め部隊編成や作戦運用、教育訓練など様々な分野がありどれを話しても相当な時間を要することからいろいろ考えた上で、今回は海上自衛隊の精神的根幹をなす旧海軍から受け継がれた遺産として「伝統・躾教育」についてお話させていただきました。
講話のレジュメは以下のとおりです。主に海軍の軍艦旗が海上自衛隊の自衛艦旗に制定されるまでの経緯や艦艇乗員として必要なシーマンシップなどの躾教育についてお話させていただきました。私たち自衛官やOBにとっては、当たり前の内容ではありましたが、市民のみなさまにとっては初めて聞くことが多く、大変勉強になったということでお礼の言葉をいただきました。(了)

海軍から海上自衛隊に引き継がれた遺産(伝統・躾教育)【レジュメ】

1 海上自衛隊について
(1)海上自衛隊の特性(防衛庁当時の記者達の雑談から)
「用意周到、頑迷固陋(ようういしゅうとう・がんめいころう)」⇒陸上自衛隊

「伝統墨守、唯我独尊(でんとうぼくしゅ・ゆいがどくそん)」⇒海上自衛隊

「勇猛果敢、支離滅裂(ゆうもうかかん・しりめつれつ)」⇒航空自衛隊

(2)海上自衛隊の活動状況
①我が国周辺海域における警戒監視、②ソマリア沖アデン湾における海賊対処行動、③南極観測支援活動 ④各国等の共同訓練・共同パトロール(プレゼンス)⑤遠洋練習航海など

(3)自衛艦(軍艦)の法的地位(主権免除(治外法権)・不可侵権)

 2 自衛艦旗制定の経緯

(1)帝国海軍における軍艦旗(十六条旭日旗)の制定と廃用

  • 軍艦旗(ぐんかんき、(Naval) Ensign)とは、軍隊(主に海軍)に所属する艦船であることを表章
  • 軍艦は、慣習国際法(国連海洋法条約第29条など)により、国籍を示す外部標識を掲示する必要
  • 1889年(明治22年)、海軍旗章条例により帝国海軍の軍艦旗として十六条旭日旗を意匠とする旗が定められ、以降、十六条旭日旗は日本の軍艦旗として用いられた。
  • 第二次世界大戦(太平洋戦争、当時呼称:大東亜戦争)の敗戦による海軍解体に伴い廃用

(2)自衛艦旗の制定

  • 1953年(昭和28年)後半になると自衛隊創設の機運が高まっており、11月ごろから、従来の組織編成や旗章、服装などが見直されるようになっていた。
  • 第二幕僚監部(現海上幕僚監部)で東京大学の意見を聞いたところ、「部隊の旗としては、旧海軍の軍艦旗は最上のものであった。国旗との関連、色彩の単純鮮明、海の色との調和、士気の昂揚等、すべての条件を満たしている」との回答があった。
  • 画家の米内穂豊(よないすいほう)に、旭光を主体とする新しい自衛艦旗の図案を依頼したところ、「旧海軍の軍艦旗は黄金分割によるその形状、日章の大きさ、位置光線の配合など実に素晴らしいもので、これ以上の図案は考えようがない。それで、旧軍艦旗そのままの寸法で1枚書き上げた。お気に召さなければご辞退致します。画家としての良心が許しませんので」との申し出をうけた。
  • 帝国海軍の軍艦旗が自衛艦旗として制定
  • 吉田茂首相は「世界中でこの旗を知らない国はない。どこの海にあっても日本の艦(ふね)であることが一目瞭然で誠に結構だ。旧海軍の良い伝統を受け継いで、海国日本の護りをしっかりやってもらいたい」と述べた。

3 海軍から引き継がれた精神(躾教育)

(1)シーマンシップ
スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り
千変万化(せんぺんばんか)の海上勤務において船乗りに必要な心構えを端的に表現したもの

(2)5分前の精神
予定された作業、日課の5分前には全員が準備を整え、その配置について発動を待つもの。有事の作戦行動に支障のないことを終局の目的

(3)3S精神
機敏(Smart(スマート))、着実(Steady(ステディ))、静粛(Silent(サイレント))
様相が一変しやすい洋上において、全ての措置を円滑に実施するために必要なこと。

(4)出船の精神
艦船が港にある場合、舳先(へさき:船首)を港口に向けている状態を出船(でふね)と言う。艦船や航空機、武器システムなどあらゆるものをすぐ使える状態で置いてあること。

(5)五省
昭和7年、当時の海軍兵学校校長、松下元(はじめ)少々が創始したもの。将来海軍将校となるべき海軍兵学校生徒の訓育に意を用い、日々の各自の行為を反省させて明日の修養に備えさせるため日々生徒に実践させた。

一 至誠に悖(もと)るなかりしか

〔誠実さや真心、人の道に背くところはなかったか〕

二 言行に恥づるなかりしか

〔発言や行動に、過ちや反省するところはなかったか〕

三 氣力にくるなかりしか

〔物事を成し遂げようとする精神力は、十分であったか〕

四 努力に憾(うら)みなかりしか

〔目的を達成するために、惜しみなく努力したか〕

五 不精に亘(わた)るなかりしか

〔怠けたり、面倒くさがったりしたことはなかったか〕