活動報告

活動報告(No.69):令和7年度市町村政研修会

2025年(令和7年)8月7日(木)

令和7年度市町村政研修会

8月7日(木)に鹿児島市川商ホールで鹿児島県市町村長会、鹿児島県市町村議会議長会等の主催による市議会議員等を対象にした「市町村政研修会」に参加しました。薩摩川内市議会からも約半数の議員が参加しました。議員として幅広い知識を学ぶとともに政策立案能力を涵養することを目的とした研修会です。
研修内容は、以下の二人の講師による講演を聞くことが主体で時間の都合で質疑応答の時間はとれませんでした。
講演① 「アメリカと世界、そして日本」:前嶋和弘氏(上智大学総合グローバル学部教授)
講演② 「持続可能な観光地域作りへの思考法~あるものを活かし、地域を編む力~」:西谷雷佐氏(株式会社インアウトバウンド東北 代表取締役)

講演の概要は以下のとおりです。

講演①:アメリカと世界、そして日本

今次の日米関税交渉の我が国への影響、トランプ政権で出される大統領令や議会との関係などトランプ政権の実情に関わる内容であり今後の我が国の進むべき道を模索する上で参考となるものでした。今回の関税交渉の合意内容はトランプの壮大なホラという側面があり、トランプの在任中に実現するものは限定的であるとのことでした。一方、トランプが多数発出する大統領令も法的根拠が曖昧なものが多く正当性に欠ける可能性があるが、トランプの影響力で世界各国は対応せざる状況になっている現状があります。来年以降大きな問題となるのは、東アジアの安保問題とのことです。これは在韓米軍の撤退や日本に駐留する米軍の減少など我が国の安保戦略に大きな影響が出てきます。直接地方政治に直結する内容ではありませんでしたが、我が国の外交・経済政策を考えるうえで必要なグローバルな視点を得るものでした。

講演②:持続可能な観光地域作りへの思考法~あるものを活かし、地域を編む力~

講師の西谷氏は、2012年着地型観光に特化した事業を創業、2018年にはインバウンド事業に特化した現在に繋がる株式会社インアウトバウンド仙台・松島を創業。一方、旅行業の傍ら全国でサステナブル/アドベンチャーをテーマとした講演や研修を行い、地域資源を活用したツアー造成、インバウンド対応、ガイド育成等のコンサルティングにも積極的に取り組まれています。
講演内容は、観光業に関わる世界基準・趨勢などを踏まえつつ、地域の資源を活かした持続可能な観光地域作りの発想法を指導するものでした。Adventure Travei(アドベンチャートラベル)、Leave No Trace(リーブノートレイス)など最近の世界的な旅行文化の趨勢など聞き慣れない内容もありましたが、固定観念を破り発想や視点を変えることで今ある地域の資源は十分に魅力的な観光資源として活用できるとのこと。また、大量に旅行者を呼ぶことより地域にとって有益な旅行者を選ぶことが大切であるとのことであり、そのためには人件費を含んだ適正な値付けをすること、地元にお金が落ちる仕組みを作ることなどが重要とのことです。
かなり長くなりましたが、簡単にいえば住んでいる人にとって当たり前の伝統文化や生活スタイルが、地域外や外国人にとっては価値あることであり、発想を変えることでそれらは魅力的な観光資源になり、一方旅行者には自然を保護し地元に適正なお金を落としてくれる人を呼ぶようにするべきであり、それが結果的に持続可能な地域観光に繋がるということです。薩摩川内・甑島の観光業を考える上でも多くの示唆を得ることができました。(了)

※ Adventure Travei(アドベンチャートラベル):次の3つの要件のうち最低2つを含む旅行形態。①身体的活動(トレッキング、サイクリング、フィッシング、カヌー、カヤックなど)、②自然(クルーズ、野生動物観察、グランピングなど)、③文化体験(茶道、華道、伝統工芸、神話、縄文文化など)
※ Leave No Trace(リーブノートレイス):環境に与える影響を最小にしてアウトドアを楽しむための環境倫理プログラム。次の原則からなる。① 事前の計画と準備、② 影響の少ない場所での活動、③ ゴミの適切な処理、④ 見たものはそのままに、⑤ 最小限のたき火の影響、⑥ 野生動物の尊重、⑦ 他のビジターへの尊重