活動報告(No.4)
2024年(令和6年)7月12日(金)
甑島からの便り(第1便)で紹介した昭和48年に放映された「NHK新日本紀行甑島竜宮の海」の動画はご覧になられましたか。当時の島の懐かしい暮らしがよみがえるとともに甑島の海の豊かさが改めて思い起こされます。
さて、漁業は甑島の産業のなかで大きな比重を占めています。漁業の今後の動向は島の発展に大きな影響を与えるものと考えられます。ここでは、今後の漁業の進むべき方向性について概要を述べたいと思います。
日本の漁業を取り巻く情勢
一般論ではありますが、日本においては漁業は衰退産業であるとの意見も一部にはあります。主要なデータ(水産白書)を確認すると以下のとおりとなります。
① 漁業生産量の推移:1984年(昭和59年)の1282万トンをピークに減少傾向となり2018年(平成30年)には442万トンに減少
② 漁業就業者数:1988年(昭和63年)の39.2万人から減少を続け、2018年(平成30年)には15.2万人に。同様の期間で65歳以上の割合は、11.5%から38.3%に上昇
諸外国の情勢
上記の情勢の推移をみれば明らかに衰退産業であるといっても過言ではないように思われます。しかし、世界の漁業の情勢は全く逆の状況を示しています。時期は多少ずれますが、1990年(平成2年)の約12,000万トンから2016年(平成28年)の約21,000万トンと大幅に増加しています。北欧の一部の国では若者が大学卒業後に漁師になるなど一般のサラリーマンより収入が高く人気の職業になっています。
日本の漁業の衰退の原因
衰退の原因としては、①温暖化による海洋環境の変化、②周辺国による先取りや乱獲などがいわれていますが、水産白書によれば、実際は日本においては漁獲量の厳格な管理がなされていないことが主因で、結果、資源の枯渇が進み仕事はきつく稼げない産業になったと分析されています。
今後の漁業の方向性
日本においては、水産資源管理をしっかりと行っていくことが、成長産業へ変貌する鍵として、2020年には漁業法が改正され、水産資源の維持のため魚種ごとに捕獲できる総量を定めることとしています。私は更に今後の可能性として、この水産資源管理にAIやICT技術を導入することで更なる効率化が図られるとともに商品の付加価値を高めることも可能になると思われます。また、甑島は離島で輸送コストや出荷までの時間の制約がありますが、遅くとも今後10年から20年後にはドローンによる輸送を事業化することで15分程度で本土の漁港に輸送が可能となり、今までより稼げる魅力ある産業へ変貌する可能性を秘めています。
以上は日本の漁業に基づく概括的な分析ですが、このようにみてくると日本は漁業後進国であったという事実です。甑島にはさらに地域固有の問題点もあるものと思われます。しかし、上記の技術等を活用するとともにさらなる工夫をすることで甑島の漁業は大きな発展の可能性を秘めています。北欧のように都会のサラリーマンより年収が多くなることも決して夢ではありません。そうなれば甑島は再び活気を取り戻し若者が戻ってきます。国内においても既に一部の事業者は、このような形態の事業を展開し成功を収めている事例があります。