活動報告

活動報告(No.81):政務調査報告【防衛省】

2025年(令和7年)11月17日(月)

政務調査報告【防衛省】

11月5日(水)~7日(金)にかけて、原子力発電環境整備機構(NUMO)と中央官庁の農林水産省、防衛省、資源エネルギ-庁及びこども家庭庁の政務調査に行ってまいりました。今回は、このうち防衛省の政務調査の概要について報告いたします。

防衛省研修

1 調査目的

我が国を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しく複雑な状況といわれているが、なかでも薩摩川内市に面する東シナ海においては、南西諸島をはじめ尖閣諸島や台湾周辺海域での中国の軍事力拡大に伴う活動の拡大・活発化が進行しており我が国安全保障への影響が懸念されている。薩摩川内市はこの東シナ海に面するとともに陸上自衛隊の川内駐屯地と下甑島に航空自衛隊のレーダーサイトが所在するなど安全保障上も重要な役割を担っている。このような背景の下、東シナ海を中心として安全保障環境の変化及びこれに対する我が国の対応、課題等について認識を深めるとともにこれら自衛隊施設に係る周辺対策事業施策の具体的内容を調査、分析し市政等へ反映することを目的とする。

2 調査結果の概要

(1)我が国を取り巻く安全保障環境の現状
ア 全 般
我が国は、力による現状変更を試みる中国、ロシア及び北朝鮮に囲まれているが、なかでも近年経済発展のもと軍事力を急拡大している中国軍の動向が我が国の安全保障へ大きな影響を与えている。中国軍は我が国周辺海空域での活動を急速に拡大・活発化しており、また一方的な活動のエスカレーションも見られている。これら活動は尖閣諸島周辺のほか、日本海・太平洋における活動の定例化を企図しているものとみられる。また日本海・太平洋における活動は、今後一層の拡大・活発化が見積もられるほか、ロシアとの中露軍事連携が今後も強化されていく懸念がある。

イ 中国の軍事力の強化
中国軍は国防費の高い水準での増加を背景に、海上・航空戦力や核・ミサイル戦力を中心として軍事力を広範かつ急速に強化している。中国の公表ベースの国防費はこの30年間で約28倍、10年間では約2倍となっている。2025年度の公表国防費は、日本円で約37兆4779億円、一方日本は8兆4,748億円で日本の約4.4倍となっている。
【日中の主要装備品の比較】
□ 近代的潜水艦     中国55隻:日本22隻(約2.5倍)
□ 近代的戦闘艦艇    中国94隻:日本51隻(約2倍)
□ 第4・第5世代戦闘機 中国1668機:日本330機(約5倍)

ウ 東シナ海での活動
東シナ海においては、中国軍艦艇が継続的かつ活発に活動している。尖閣諸島に近い海域では恒常的に活動している。また、中国軍機も尖閣諸島や沖縄本島をはじめとする南西諸島により接近した空域で活発に活動を繰り返している。
尖閣諸島周辺海域では戦闘艦艇の我が国接続水域への入域や中国海警船から発艦したヘリコプターによる領空侵犯も生起している。一方、台湾周辺においては、多数の中国軍機・艦艇が参加する演習が活発に行われており、平成22年8月には我が国EEZ(排他的経済水域)を含む我が国近海に設定した訓練海域に向け、弾道ミサイル9発が発射された。2024年8月には中国軍の情報収集機が甑島西方海上(男女群島付近)で領空侵犯した。

(2)防衛施設周辺対策事業
防衛施設周辺対策事業の基本的な考え方は、自衛隊等の行為又は防衛施設の設置・運用により生ずる障害を防衛施設周辺の住民にのみ受任させることは不公平との観点で、この障害の防止・軽減等のため防衛施設周辺地域の生活環境の整備等について国が施策を実施すること(公平の観点)とされ、このためためその施策は補償的な性格であり、また国が原因者たる立場で措置され、防衛行政を担当する防衛省において実施されることとなる。施策については、大きく自衛隊等の行為により生じた障害等に対する補償と防衛施設の設置・運用に伴い生じた障害等に対する補償の二つがあり細部は以下のものがある。

ア 自衛隊等の行為により生じた障害等に対する補償

① 演習場の荒廃等による障害防止工事の助成(河川、道路等の改修)

② 騒音防止工事の助成(学校、病院、住宅等の防音工事の助成)

③ 農林漁業等の経営上の損失への補償

イ 防衛施設の設置・運用により生じた障害等に対する補償

① 民政安定施設の整備の助成(有線ラジオ放送施設、消防施設、屋外運動場、体育館、コミュニティ共用施設など)

② 特定防衛施(飛行場、演習場、弾薬庫など)設周辺整備調整交付金の交付(消防施設、医療施設など)

(3)防衛施設の誘致に関する手法、手続き等
各自治体における防衛施設を誘致するための手続きについては、法令など定まったものはなく、ケース・バイ・ケースとのことである。最近の誘致活動の事例としてさつま町の弾薬庫の誘致活動があるが、これについては当初、地元商工会からさつま町議会に対して請願書が提出され、議会で承認ののち平成31年に自治体から九州防衛局に対して請願書が提出されている。一方、防衛省としての防衛施設設置の判断基準については、安全保障環境を考慮した防衛上の必要性、現在の防衛施設の配置及び役割、設置場所の環境及びインフラなどを総合的に判断して決定するとのことであり、これについてもその時々の情勢に基づき判断されるとのことである。

我が国を取り巻く安全保障環境は今後ますます厳しく複雑なものとなっていくものと見積もられている。このような情勢を背景に政府・自民党は国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に向けた議論を始める予定である。議論の内容によっては、東シナ海という要衝の海域に面し、陸・空の防衛施設が設置された薩摩川内市にとっても少なからず影響も予想される。国民保護の観点からも今後引き続き我が国周辺の安全保障環境の推移とこれら安保3文書の議論の行方に関心を持ち情報収集していく必要がある。

次回は、原子力発電環境整備機構(NUMO)の研修結果についてご報告します。(了)