政策

政策


「故郷を守る。」

 - 子供たちが夢と希望を持てる社会を実現 -


はじめに

「故郷を守る」とは単に災害等から市民の安全を守ることではありません。薩摩川内市は近年激甚化・頻発化する自然災害の脅威を始め、少子高齢化・人口減社会の到来で今後深刻化する働き手不足、医療、介護費用等やインフラコストの増大、そして原発事故の脅威など様々な脅威、課題に直面しています。一方、現状の脅威、課題を解決するのみでは現状の人口減少、人口流出を防ぐことはできません。薩摩川内市を魅力ある街にして皆様が住み続けたいと思うわせる必要があります。魅力ある街とは普段の生活が安心・安全に送れ、また将来においても夢と希望が持てる街です。子供や若者の夢と希望も守らねばなりません。

私は災害等から市民を守り、魅力ある街づくりのために以下の政策を提言していきます。少子高齢化・人口減社会にともなう様々な脅威・課題から故郷を守ります。

なお、以下に提言する解決のための政策(技術・方策)はゼロから作り出すものではありません。すでに解決の糸口は日本の自治体、民間企業、NPO法人等の団体により既に取り組みの事例や技術の萌芽が見られています。いかにこれらの情報を収集・分析し、そこから新たな発想を得て薩摩川内市の現状に適合した方策に統合していくかが重要となります。5年、10年で達成できない課題もあります。しかし、いくら期間がかかろうがこれらの目標を堅持し達成しなければ、日本の多くの市町村が消滅の危機に瀕しているのと同じ運命をたどることとなります。



1 市民の安心・安全の確保

私は30年以上に及ぶ海上自衛官としての勤務や自衛隊定年後の羽田空港の民間会社での5年間の勤務において多くの災害、事故に遭遇し対応するとともに多くの教訓を学びました。災害や事故はいついかなる時起きるか予測がつかず、また一旦発生すれば、家族を含む関係者の人生や住民の生活に多大な影響を及ぼします。市政にとって市民の皆様の安心・安全を確保することが全ての前提です。私がこれまで培ってきた知識、経験、教訓等を市民の皆様の安心・安全の確保のため活かしていきたいと考えています。


防災体制の更なる充実と被災者支援対策の抜本的改革

近年、地球温暖化による気候変動の影響か、線状降水帯やゲリラ豪雨の発生など様々な自然災害が激甚化し、発生頻度も増えています。特に我が国周辺で発生する台風の規模は、私が記憶している50年間ほどのなかで、ここ最近は確実に巨大化しています。一方、地震列島である我が国においては、地震災害はいつどこで起きてもおかしくない災害の一つです。薩摩川内市の周辺にも断層の存在は知られており、いついかなる時周辺地域で巨大地震が発生するかわかりません。熊本地震や能登半島地震はまさにそのよい例です。災害への備えとして、常に防災体制を見直し最新の知見を反映するとともに市民への啓発活動は最も基本的で重要なことです。この際、災害対応のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を推進する必要があります。災害等発生時は情報を迅速、正確に収集することが大切です。今後はドローンの活用なども検討する価値があると考えます。

台風被害にせよ地震の被害にせよ、一度発生したらその復旧には多大な経費と時間、労力が必要とされます。今後、少子高齢化及び人口減が進む地方自治体にとっては、平常時のインフラの維持経費の捻出も苦労する中で、災害復旧に長時間を要するなど深刻な問題が予想されます。実際、能登半島地震では、震災後の復旧の遅れが問題となっています。半島という狭隘な地形と道路が寸断されて人や物の輸送が限定されていることも復旧活動の遅れの一因ですが、被災した自治体の対応に時間を要していることも一つの要因です。職員自体が被災した上に被災者支援関連の手続きが複雑でかつ経験したことがない業務のために一つ一つ関係法令を調べながら処理せざるを得ず、対応が後手々々に回っています。

事前の防災計画に注力するのみでなく被災者支援に関する関連法令、行政側の事務手続きの理解と復興計画をどのように策定していくか、このようなことも事前にシミュレーションするなどの準備が必要です。また、被災した市民に対してもどのような支援や補助があり手続きはどのようにするのかなどの事前の情報提供も重要です。ただ、現状の国の支援は生活再建を果たすためには明らかに不十分です。例えば災害復興支援基金を創設し被災者の支援を手厚くする必要があります。自然災害による被災者の支援は社会全体で対応するべきです。

なお、被災した自治体職員のみでは対応が困難なことから姉妹都市、NPO法人等と事前に協定し支援体制を構築しておくことも重要です。また、DX化を進め事前にシステムや支援計画を構築しておくことで速やかな対応が可能となります。復興作業の遅れは更なる人口流出を招くこととなります。

東日本大震災、能登半島地震を教訓とした原子力災害時の避難計画の再検証

福島第1原子力発電所における原子力災害は、一度原発が暴走を始めれば人類は核を制御できないことを明確に証明しています。また、能登半島地震では強い地震が発生した場合道路網が寸断され住民の避難は極めて困難になることが明らかになりました。薩摩川内市の原発事故発生時の避難計画を始めとする各種災害対策は果たして実行性のあるものなのか、改めて検証する必要があります。仮に安全が確保できないのであれば原発は停止しなければなりません。それ以外に市民の安全を確保する方法はないのです。


原発の早期廃炉と課題の抽出

市民の安心・安全を守るという話は、川内原発の問題を抜きに論じることはできません。薩摩川内市が全国の一般的な地方自治体と大きく異なる特徴は、川内原子力発電所の存在です。1号機は昭和597月、2号機は昭和6011月、それぞれ営業運転を開始しており、1号機工事着工(昭和541月)から換算すると45年が経過しています。原子力発電所の最も大きな問題は、既に福島第一原発の事故で判明したとおり、一度核が暴走を始めたら人類は制御できないことです。これは福島第一原発の事故が起こった後の現在においても変わらぬ真理です。福島第一原発では幸い原子炉や格納容器の爆発までは免れましたが、仮に原発の一つでも爆発した場合、以後現場での対応ができなくなることから他の原発も連鎖的に爆発し、当時危惧されたとおり東日本は人が永遠に住めない地域になってしまう恐れがあったわけです。

私達は、過去の事故の教訓を忘れてはなりません。福島第一原発事故は職員が決死の覚悟で最後まで対応したから最悪の事態が免れたのではなく、まさに人知を超える奇跡がそれも複数回起き壊滅的な被害を逃れたことが近年判明してきています。また、能登半島地震からも学ぶべきです。志賀原発は震度5強の揺れにすぎませんでしたが、重大な被害が発生しています。幸い運転停止中であったため最悪の事態は免れました。しかし、それ以上に珠洲市の震源付近にかつて珠洲原発が建設される計画があったものの住民の反対で撤回されていたという事実は極めて重要です。震度7の揺れに加え4mを超える陸地の隆起が発生した今回の地震で仮に珠洲原発が建設されていた場合、福島原発事故を超える大災害が発生したことは容易に想像できます。能登半島はおろか日本海側の石川、富山、新潟各県は永遠に人の住めない土地になっていた可能性があります。日本人はこのような奇跡の連続で壊滅的な原発事故から守られてきたのです。もうそろそろ学ばなければ天の神様も見放すのではないでしょうか。

私は原発は可能な限り速やかに廃炉にすべきであると考えます。これはイデオロギーとして反対するものではありません。国家防衛の最前線で様々な経験をし、また災害対応など危機管理の現場に長年携わった者として科学的(現実的)にかつ論理的に考えて危険だから反対します。なぜなら原発の耐震性は一般住宅(三井ホーム:5115ガル、住友林業:3406ガル(HPより))より低く、かつ原発立地場所には想定を超える地震動(揺れの加速度で単位はガル)はこないという前提に立っているからです。

川内原発の耐震設計基準(基準地震動)は建設段階では1号機:270ガル、2号機:372ガルにすぎませんでした。現在それが620ガルに改善されているとのことですが、620ガルを超える地震動は多数発生しています。国内で1000ガル以上の地震動をもたらした地震は2000年以降の20年だけで18回も発生しています。


参考:地震動の速度の比較イメージ(数字は全て概数)

地震動Gal

加速度

1秒後の秒速(時速)

10秒後の秒速(時速)

270ガル

270cm/s2

2.7m/s(9.7km/h)

27m/s(97km/h)

1,000ガル

1000cm/s2

10m/s(36km/h)

100m/s(360km/h)

2,828ガル

2,828cm/s2

28m/s(102km/h)

280m/s(1,020km/h)

注:2,828ガルは能登半島地震の最大地震動(加速度)


一方、発生確率についても、例えば1995年阪神・淡路大震災発生直前の発生確率は、向う30年以内に0.028%でした。2016年熊本地震を引き起こした布田川断層についても地震直前に発表されていた30年以内の発生確率は、ほぼ00.9%でした。かつて東海地震は科学的に予知できる地震として可能性が高まった際は「警戒宣言」が出されることになっていましたが、国の中央防災会議の調査部会では平成25年に「確度の高い地震予測はできないのが実情」との報告をしています。以上のとおり現在の科学では地震は予知できずどこで起きてもおかしくないのです。

川内原発の近傍にある甑断層は当該断層が単独で動いた場合においてもM7.5規模の地震が予測されています。現実に志賀原発は想定される地震動をわずかながら超える揺れが襲っています。これが珠洲原発であればどうなっていたのでしょうか。小学生でもわかる話です。「原発立地場所には想定を超える地震動はこないという前提」にたつ原発の安全神話がいかに空虚なものであるかご理解できるかと思います。そもそも確度の高い地震予知はできないのが実情とされているのに、想定を超える地震は来ないという前提は理屈にあいません。ましてや川内原発は間もなく40年を超えようとしています。放射線に汚染されている原発施設は正確に経年劣化を測定できない場所もあるはずです。

原発事故のもたらす被害は甚大で、その被害は我が国の存続にかかわるほどの影響がでます。このため原発には高度の安全確保が求められます。しかし、現状は上記のとおりあまりにお粗末です。

さらに原発の問題は使用済み核燃料の存在です。令和583日の南日本新聞の記事によれば、川内原発の使用済み核燃料は同年6月末現在、1号機は燃料プールの容量1868体に対し1356体を、2号機は同容量1356体に対し1050体を保管しているとのことです。今後もたまり続けた場合、1号機は11年、2号機は5年で満杯になる見通しとのことでありました。使用済み核燃料からは、冷却手段が絶たれた場合、最終的には大量の放射性物質が放出され原子炉本体よりさらに広い範囲で放射能汚染を引き起こすこととなります。また、使用済み核燃料は、今後何万年も人類は管理していかなければなりません。そのコストとリスクは計り知れないものです。現状においては最終処分場すら決まっておらず、まさにトイレのないマンションと同じ状態なのです。普通に考えればSDGsの考えとは全く相容れなく、それどころか逆行するものです。

なお、仮に廃炉が決まったとしても廃炉には多くの課題があります。私たちはそろそろそのような視点をもって検討を開始していく必要があります。ただ薩摩川内市は川内原発立地自治体として各種交付金が国、県から配布され財政が潤っていることも厳然たる事実です。原発の廃炉作業には数十年かかるとはいえ、稼働中に比較しかなりの交付金が削減されます。原発の稼働は電力供給の安定性、コスト(電気料金含む。)の低減につながります。原発が停止すればコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論につながります。しかし福井地裁裁判長の樋口英明氏はこれに対して大飯原発運転差止め判決において「原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である。」と論じています。まさに箴言です。


地政学的リスクへの対応

我が国を取り巻く国際情勢、安全保障環境は極めて厳しい状況となっています。中国による尖閣諸島周辺の領海への侵入を始めとする東シナ海、南シナ海への海洋進出を継続、強化しています。一方、北朝鮮はミサイル開発及び核開発を継続し、その軍事的脅威は我が国の安全保障にとって決して無視できるレベルではありません。これに加え、史上最悪の米中関係、中国の台湾への侵攻の可能性、韓国と北朝鮮の紛争などこれらの紛争・衝突がいつ起こってもおかしくありません。常に最悪のシナリオを想定し有事に備えていく必要があります。薩摩川内市も他人ごとではありません。仮に中国が台湾に侵攻した場合、台湾を支援する米軍の後方基地となる我が国を混乱に陥らせる目的で川内原発に対するミサイル攻撃を企図してくる可能性も否定できません。このシナリオは能力的には可能でも国際法でも禁止されており現実には起こり得ないと考えられていました。しかしロシアがウクライナのザポリッジャ原発を攻撃し未だに統制下においていることから、原発攻撃へのハードルが下がり、残念ながら現実に起こりうる可能性のあるシナリオになりました。

 以上のとおり、我が国を取り巻く安全保障環境が戦後最も厳しい状況になっていますが、そのためにも市民の皆様に正しい防衛意識の普及・高揚を図っていくとともに精強な自衛隊を維持し紛争を未然に防いでいかねばなりません。そして精強であり続けるためには優秀な人材を確保しなければなりません。現在、自衛官募集は少子化の影響で対象者が減少し厳しい状況になっています。我が国の安全、そして緊迫した前面に最も近い薩摩川内市の平和と安全を守るためにも薩摩川内市は隊友会、自衛隊家族会等の関係公益諸団体と連携を図りながら正しい防衛意識の普及と自衛官の募集により積極的に協力していく必要があると考えます。自衛官は有事のみならず災害派遣でも活躍しています。離島や1級河川を有する薩摩川内市で今後災害が発生した場合も自衛官は活動してくれます。


2 少子高齢化・人口減社会への挑戦

令和51222日、国立社会保障・人口問題研究所は、2050年までの「地域別将来推計人口」を公表しました。2050年には、日本の人口は2020年に比較し2146万人減り1468万にとなります。東京一極集中は続きますが、一方、地方の人口減少と高齢化が同時並行で加速度的に進行すると予想しています。鹿児島県の人口指数(2020年を100とする。)は、2035年で86.82050年で73.715年ごとに15%減り、2050年には約3割人口が減ることになります。薩摩川内の人口は2035年で83,419人、2050年では74,975人と予想されています。

また、2050年には経済活動を主に担う1564歳の生産年齢人口の割合が半数を切る自治体は71.1%に上るとされ、多くの自治体で社会基盤の維持がより困難になる可能性があります。薩摩川内市は、2050年時点で生産年齢人口の割合は51%とぎりぎり半数を超えていますが、今後の情勢、対応次第では半数を切る可能性もあります。

それでは、具体的にどのような不都合な事態が起こるのでしょうか。リクルートワークス研究所の報告によれば、2040年に日本では1,100万人の働き手が不足すると予想されています。この予測は人口動態に基づくシミュレーションから導き出されています。人口動態に基づくシミュレーションは最も確実な未来予測ともいわれ「座して待てば」高齢人口比率の高まりによって今後10年から15年かけてこうした局面に至るのはほぼ間違いないと考えられます。そしてこの人手不足は生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなるのではないかという重要な課題として現れます。具体的には鹿児島県で生活維持サービスの充足率は約70%とされ4人必要な仕事に23人しか集まらないことになります。このため以下のような事態が懸念されます。

  • ドライバーがいないため荷物が届けられない地域が発生する。
  • ゴミ収集職員が不足し、ゴミの収集のペースは現在の半分程度になる。
  • 介護現場では介護スタッフの不足が顕在化し、欠員が常態化する。
  • 建設作業に従事する施工管理者・オペレーターが慢性的に不足し生活道路は穴だらけ、災害の復旧もできなくなる。
  • 病院設備はあるが医師、看護師などの医療スタッフがいない状態になる。
  • 開いている病院も長蛇の列で病院で診察を受けることが1日がかりの作業となり、救急車の立ち往生も常態化する。


以上が生活維持サービス低下の一例であり、傍観するだけで行動しなければ、ほぼ待ち受ける未来となります。離島山間部はさらに不足することが予想されます。また、人口減少でスーパーや商店が撤退し、買い物難民が多数発生します。

少子化と人口減が地域の活力を奪い、さらなる都会への流出を招く「負のスパイラル」を脱出するのは、現状のままでは難しいと考えられています。しかし我々はこれを克服していかなければならないのです。薩摩川内市が持続可能な自治体として永続し、また子供たちの夢と希望のある社会を実現するためにも政策を提言します。


「子育てサポート」施策の更なる充実と女性が働きやすい環境の構築

人口動態予測は最も正確な統計のひとつであるといわれます。恐らく国立社会保障・人口問題研究所の予測はかなり高い精度で実現すると思われます。しかしこの予測はあくまでも現在までの過去のデータに基づく予測であり、今後の対応次第では大きく将来が変わる可能性があります。薩摩川内市は現在においても「子育てサポート」施策に基づき様々な取り組み、出生率も県内平均より高い状態を維持しています。しかし現状の少子化、人口減社会は加速度的に進行しており、このままでは更なる少子化が進み先ほどの予測された以上の社会が到来する恐れがあります。

このため、私は更なる子育て支援の一例として以下の政策を提案します。


誕生お祝い金の大幅な増加

人数 目標額
1人目 50万円
2人目 75万円
3人目 100万円

私はこの春まで神奈川県の海老名市に住んでいました。海老名市の人口は約14万人です。一方薩摩川内市は約9万人ですが、なんと一般会計の予算は薩摩川内市が60億円ほど多いのです。この施策で3億円~4億円ほどかかるとは思いますが、海老名市の予算と比較すれば歳出を適正化することで可能なものではないかと考えます。また、お祝い金の増額は、単に子供が誕生した家庭に支払われるだけで他の市民には恩恵がないように思われますが、そうではありません。短期的には市内の商店等を潤すのみでなく長期的に人口の減少をくい止め将来の経済的発展につながるものであり、一種の社会的投資と考えることができます。


参考:薩摩川内市と神奈川県海老名市の予算の比較(令和5年度)

自治体

人 口

一般会計予算額

民生費(内数)

議員定数

薩摩川内市

9万人

545億円

170億円

26

海老名市

14万人

485億円

212億円

22

また、子供が生まれてからの支援も重要です。かつては大家族で母親以外の人が子育てを手伝っていましたが、現在は核家族化でかつ母親も働いている人が増えています。これでは子供が欲しくても2人、3人と育てていくことは大変なことです。私の母は子供を8人育てあげましたが、祖母や兄弟が面倒を見てくれたので子育てで苦労した記憶はないと口癖のようにいっていました。現在はかつての大家族の社会と異なります。今後は社会全体で働く女性の子育てを支援していく必要があります。既に岡山県奈義町、千葉県流山市など成果を上げている自治体は多数あります。これらの先例を参考に薩摩川内市に有効な施策を検討していく必要があります。働きながら子育てをする母親を社会で支援する手厚い子育てサポート施策は、予測される未来を変えうる最も重要な対策です。

その他の施策として東京や関東の各自治体では小中学生給食費の無償化も進められています。本県同様に過疎化に悩む青森県では2024年度から19億円をかけて小中学校全校の給食費無償化を開始します。薩摩川内市も段階的に進めていく必要があると考えます。


教育支援体制の充実と教師の勤務環境の改善

私は中学卒業後甑島を離れ川内高校で寮生活を送りました。下宿に比べ寮費は安いですがそれでも現金収入が少ない島の高齢の両親にとっては毎月の仕送りは大変なことだったと思います。ある意味自宅から通う大学生と同じ程度の経費がかかっていたのではないかと思います。現状においては甑島から修学する学生には毎月2万円の支援がなされています。甑島の出身者としてこのような取り組みを行っていただく薩摩川内市議会及び市の取組みに感謝しています。しかしながら島民にとっては高校を出すまでの出費は高いものです。現状の物価高等の影響も考慮し増額することが必要ではないかと考えます。このような取組みが甑島の人口減の抑制に貢献するのではないかと考えています。

今後は少子化の影響で児童・生徒数が減少し、また教師自体の採用数も減少が見込まれることからさらに小中学校の統廃合が検討されていくものと予想されます。しかし廃校は地域社会の更なる衰退を進め人口減少がさらに進むことになります。また、遠距離通学することで子供たちの成長に様々な影響を与えることになります。単なる教育の効率化のみの視点でなく、地域社会の存続と子供たちへ与える影響を鑑み慎重な検討が必要であると考えます。

一方、教育支援は指導する教師の勤務環境も改善していくことが重要です。現在国会で教師の各種手当の増額や新設などの検討が進められていますが、教師が働き甲斐がありプライドを持って勤務できる環境を作為することが、結局は子供の教育に良い影響を与えるものと考えます。現状の環境では退職者が増え優秀な人材も確保することが困難です。教師の勤務環境の改善は県と協力し進めていく必要がありますが、市独自の対策も可能であると考えます。例えば手当分を超える残業は確実に夏休みなど期間を通じて処理することや現場の教師の声を聴き本当に困っていることは何かを明確化し対策をたてるなどは可能と考えます。また、インクルーシブ教育の推進など、教師のみでは対応できない教育環境となってきています。今後は教育の流行を追うのではなく、将来を担う子供たちのためにいかなる教育と教育支援体制が必要となるのか教育委員会や保護者、地域の皆様と一緒に考えていく必要があると考えます。


健康寿命日本一達成による医療、介護などの社会福祉費の抑制

人口減社会で高齢化が進めば、医療、介護などの福祉関係の予算が増える一方で生産年齢人口は減少し、若者の社会保障費の負担が増すとともに市の財政もひっ迫していくことは容易に予想できます。これを防ぐためシルバー世代が健康に生活を送り医療費、介護費用の伸びを抑制することは喫緊の課題であると考えられます。

このためにもシルバー世代の健康寿命をさらに伸ばしていくことが重要です。薩摩川内市もSDGsポイントの付与など様々な取り組みを行っていますが、さらに専門的知見も得て体系的に進めていく必要があります。また、努力して成果を上げている人が見返りを得るようなシステム設計をしていくことがやる気を喚起し成果をあげることにつながると考えます。すでに国内の自治体では先行する事例があることから参考にし、薩摩川内に適切なシステムを設計していく必要があります。「健康寿命日本一」の自治体を目指します。


シルバー世代25,000人の知識・経験を活かせる社会システムの構築

2040年には日本で1,100万人の働き手が不足するとの予測があるとおり少子高齢化、人口減少社会では働き手が不足し、様々な弊害が生じてくることは既に述べたとおりです。

薩摩川内市における2020年の65歳以上の人口は29,851人、2050年では26,216人と予測されています。薩摩川内市の人口に占める割合は大きくこの世代が働き手不足の社会で活躍することで事態は大きく変わってくることが予想されます。今後はシルバー世代がそれまでに培った知識、経験等を活かし社会に貢献できる社会システムを構築することが、持続可能で若者が希望を持てる社会を創生するためには必須の条件であると思います。ただ、現役時代と同様に引き続き働くというものではシルバー世代の夢も希望もなくります。

今後はAI、ロボット等は社会に普及してきます。これらを活用するとともにシルバー世代の資格、能力等をデータベース化、ネットワーク化し決して無理することなく生きがいのある働き方を提案できるシステムを構築していくことが今後重要になってくると考えます。現役時代の技能をAIやロボットを活用しリモートで作業をしたり、あるいは老人養護施設と保育園の併設で元気なお年寄りが保育園の支援をするなど、このような取り組みは国内のNPO法人や一部の企業でも取り組みが始められており、参考とできる事例があります。状況によってはシルバー世代も納税することも可能となり市の財政も潤うことが期待できます。薩摩川内市も取り組みを開始することを提案します。


3 次世代技術の活用による都会より豊かな地方都市創生

少子高齢化、人口減少社会においては、働き手が不足し税収も減少していくことが予想されるため、AI、ICT、ロボット等を活用して業務の省力化・効率化を進めていかねばなりません。また、今後インフラの維持、整備のためにも重要な役割を果たします。薩摩川内市の発展のためにも行政、地元企業など市全体で次世代技術を活用していくことが求められます。

DX、空飛ぶクルマなどの技術は社会の在り方を一変させる可能性を秘めています。三重県による「新たなテクノロジーである「空飛ぶクルマ」を活用して、交通、観光、防災、生活等の様々な地域課題を解決し、誰もが住みたい場所で快適に住み続けることができる社会の創出、そして都会より豊かな地方都市を創生する」との取みは大変示唆に富み参考となります。


AI、ICT活用等のDX化による行政の省力化・効率化と市民生活の利便性向上

今後社会は複雑さを増すとともに社会全体が高齢化に伴う各種事務等が増加することが見積もられます。しかし生産年齢層が減少し公務サービスを担う人材を増やすことは不可能です。今後はチャットGPT等のAIを活用した行政サービスに移行し省力化・効率化を推進しなければなりません。例えば10年後は全ての行政手続きをほぼスマートフォンを利用したオンラインで可能とするような明確な目標を立てて段階的に自動化・オンライン化を進めていく必要があります。各種事務手続きについてはほぼAI化により人手を省き、残りの人材はAIやシステムの専門職、新たな技術に対応した創業等(例:シルバーバンクを活用した新たなサービスの創業、新規産業・サービスの誘致とそれに必要な基盤整備、次世代技術の活用など)を担う企画部門を充実していく必要があります。

少子高齢化・人口減社会においては従来の取組みでは解決できない課題が多くなります。最新の技術を活用し今までにない新たな社会の創出が必要不可欠です。このことからも行政のシンクタンク的機能強化と各種施策の統合的推進、新たな社会システムの構築していくための取組みはますます重要となります。

なお、行政システムは基本的には県内自治体とも共通する部分が多いことから、薩摩川内市単独ではなく県及び県内自治体も取り込み県全体としての行政効率化プロジェクトとして取り組む必要があります。


空飛ぶクルマの調査・研究と定期航路化等の検討体制構築

空飛ぶクルマの進化も近年著しいものがあります。現在は米国や欧州の新興企業を中心に200300社ほどが開発を競っている状況です。日本のANA、トヨタ、日本国空なども新興企業に出資して開発に参入しています。米国金融大手モルガン・スタンレーの調査では、空飛ぶクルマの市場規模は、2040年に約140兆円、2050年には約1300兆円に達すると予想されています(2023712日・讀賣・経済)。2022年度で世界の自動車の市場規模は約350兆円ですが、これと比較しても空飛ぶクルマの今後の市場規模がいかに厖大で発展の可能性があるか分かると思います。

すでに国内外でエアタクシーサービス等、地域内における空飛ぶクルマを活用した先進的なエアモビリティサービスの展開が企図されています。ご存じのとおり2025年大阪万博においては実際に空飛ぶ車が運用される計画です。日本航空も「欧米の人が求める観光に必要」との考えで北海道のリゾート地や九州・沖縄の離島での事業化を検討しており万博に引き続き2025年実現を視野に取り組んでいます。自治体としては宮崎県延岡市が空飛ぶクルマの救急搬送や災害現場での活用を目指し2027年度運用開始で運航体制の整備を進めています。また、三重県はエアモビリティによる 物と人の移動を前提とした、国土の最大活用と社会システムの再設計を行い、都会よりも豊かな地方都市の創生を目標に2030年代の実用化を目指しています。香川県も20243月「かがわの空、新移動プロジェクト」を創設し2020年代後半の商用運航に向けてロードマップを策定しています。

空飛ぶクルマのサービスは今後大いに発展するとともに新たな社会を実現する可能性があります。私は薩摩川内市の行政、企業が一体となり空飛ぶクルマの経済への影響を調査するなど調査・研究の体制を構築し新たな未来、新時代を開拓して行く必要があると考えます。これによりエアタクシーサービスを始め、関連産業などの新たな産業の誘致が可能となります。空飛ぶ自動車は飛行機(部品点数:95万)やヘリコプター(部品点数:10万点)と異なり電動化により部品点数が12万点に抑えられ機体コスト・整備コストが大幅に削減されます。このため決して実現不可能な夢物語ではありません。

具体的な運用の一例としては、鹿児島空港を起点とし鹿児島空港-川内駅-甑島を航空定期便として運用するなども考えられます。これにより空港から川内駅までが15分、川内駅から甑島までが15分(時速100ktの場合)と全く異次元のエアモビリティサービスが整備されることとなります。

なお、この取り組みは一自治体の予算では賄いきれないため、国、県等の支援を得つつ企業等を含め運航ルートも交通の不便な枕崎、大隅地区等も含めた県内の新たな交通インフラ整備の位置づけで調査、研究を開始するのが現実的であると考えます。

新たな住民の物流・交通手段として、災害現場や救急搬送、観光分野では空港やターミナル駅からの移動手段として、また遊覧などのスカイアクティビティとして新たな未来が開けてきます。子供たちへ夢と希望を与えることにもつながります。


ドローンの防災、救急、生活支援等への活用

ドローンは世界のあらゆる分野で活用が進められ、その技術とサービスの進化は著しいものがあります。この数年間で軍事分野ではドローンはなくてはならない武器システムになってきています。ドローンの活用場面は多く防災・災害対策、救命・救急、建設・土木、農水産業、観光PR、各種イベントなどでの活用などで活用されています。

薩摩川内市においても防災・災害対応、救命・救急、農水産業、観光業などの分野で活用することを提案します。これにより市民の安心・安全の確保と農水産業、観光業など新たな展開が期待できます。また、今後懸念される買い物難民の発生への対応としてドローンの活用は一つの解決手段となります。


電気自動車の普及促進・充電設備の設置拡大

昨今の国際情勢を俯瞰すると、今後ますます石油の値段は高騰していく可能性が極めて高い情勢です。特に僻地や離島は輸送コストもかさみ死活的な問題になっていきます。現状においては電気自動車の普及は電池の容量が小さくかつ高価なことに加え充電インフラが不足していることがネックとなりガソリン車ほどは普及していませんが、電池開発は各国で激しい競争が進められており近い将来新規技術の開発で劇的に状況が変わる可能性があります。また脱炭素社会の実現に向け、二酸化炭素を排出しない電気自動車はますます必要とされます。このため今後はガソリンを使用しない電気自動車の普及を推進していくべきです。また、同時に充電設備の増設、家庭充電設備の普及も補助金を出すなどして推進していく必要があります。

なお、電気自動車の電気代は現状においてもガソリンに比較し深夜料金を利用する場合は3分の1程度の値段で使用できます。また電気自動車はモーターで駆動するため坂道の多い離島や山間部の集落においては交通には適したビークルといえます。これらはSDGsの基本方針ともマッチするものですあり、脱炭素社会の実現に一歩近づく取り組みです。


4 新規産業誘致による魅力ある雇用環境の構築・財政基盤の適正化

少子高齢化、人口減社会に抗して持続可能な自治体として存在していくためには、子育て支援の充実のみでは不十分です。子育て支援に必要な財源を賄うためにも新規産業の起業あるいは誘致は必要となります。これにより若者の雇用も増え子供を産み育てる世代である20代から30代の就業も実現します。


ドローン、空飛ぶクルマを軸とした関連産業の集積

前項で記述したとおりドローン、空飛ぶクルマの技術革新は目覚ましく今後重要な産業となる可能性があります。2050年代には現在の自動車産業市場の3倍から4倍の市場規模が見込まれています。これらを活用した社会を実現する為には、ドローンや空飛ぶクルマの整備、充電設備、教育・訓練施設など様々な関連産業が必要となります。関連産業の集積で新たな雇用を生み市の発展に寄与できるものと考えます。新たな薩摩川内市総合計画にこれらの事業を盛り込み組織的体系的に進めることを提案します。


水素関連産業の誘致による九州の水素供給基地化

脱炭素社会の実現に向け、水素は燃焼時に二酸化炭素を出さないエネルギーとして期待されています。このため今後水素の活用は劇的に進むことが見積もられます。20236月、政府は2017年に策定した「水素基本戦略」を改定し、水素供給量の目標を2050年の水素供給量2000万トンに向け2040年までに現在の6倍となる1200万トンとする新たな方針を決定しました。また商用化を見込む2030年頃までに水素の価格を現状の3分の1程度まで下げ、普及を後押しするとしています。このため今後15年間で官民あわせて15兆円を投じ、供給網(サプライチェーン)構築する計画です。現在の水素の価格は既存燃料の液化天然ガス(LNG)より4倍ほど高い1立方メートルあたり100円ですが、これを2030年には30円、2050年には20円まで下げる計画です。

石油、天然ガスは世界の情勢から価格がさらに高騰する恐れが高まっています。水素開発は各国が水素技術の開発でしのぎを削る状況から価格は予想より早く安価になる可能性も秘めています。また、原料を国内で賄うことができるという戦略的優位性もあります。

このように今後重要なエネルギーとなる水素ですがその輸送やコンビナート建設を含むサプライチェーンづくりはまさに始まったばかりです。九州においても水素供給基地は必ず必要となります。薩摩川内市もこのようなグローバルな視点に立ち、時代を先取りして水素エネルギー社会へシフトしていく準備を進めるべき段階を迎えているものと考えます。このクリーンで持続可能な水素エネルギーの九州全体の基地としてまた、水素関連企業を積極的に誘致し新たなモデル都市として発展することを提案します。ただし薩摩川内のみでは敷地等の制約もあることから県の協力を得て他の北薩地区も含め広域的に開発、企業誘致を進める必要があります。神奈川県川崎市などの取組みは参考となる事例です。

一方、国内にはすでに水素製造に関して画期的な技術を用いて安価で安全かつほぼ無限大に供給できる企業も出現しています。究極のクリーンエネルギー技術です。この企業はマスコミでも報道されているとおり山梨県富士吉田市に世界で初めての水素発電所の商用運用を開始しています。また、この水素発電システムは安価かつ小型で災害時用の緊急発電装置としても活用が期待されます。このような国内の進んだ技術をもつ企業の誘致は薩摩川内に新たな雇用と夢のある未来社会を実現します。


原子力・化石燃料から水素・再生可能エネルギーを活用する社会へ

2024210日の朝日新聞の一面で電力の発電量と使用量を調整するために必要な太陽光風力の発電制御が2023年度1年間で約19.2KWに達したことが報道されました。これは45万世帯使用量の1年分に相当する発電量とのことです(鹿児島県の世帯数は令和5年度で約73万世帯)。そしてその7割を九州が占めたとのことです。このように九州地方の太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーの生産は国内でも発電量が多く現実的には原子力発電に頼らなくとも火力、水力発電との適切なエネルギーミックスを実現することで十分な電力の維持が可能になるものと見積もられます。この余剰電力で水素を生産することも可能となります。

このため完璧な安全が確保できない現状の古い原子力発電所は廃炉にし、新たなクリーンで持続可能な電力供給基盤を構築していく必要があると考えます。電力会社は一事業者にすぎませんが、原発事故の影響は事業者の責任の範疇を超え国家の存亡にかかわる場合があります。このため住民にも一定の意思表示を行う権利があると考えます。大規模な原発事故がおこると我々は薩摩川内の土地に住めなくなります。いつまでそのような恐怖を次世代の子供たちに残すのでしょうか。我々の世代で終わりにする必要があります。

将来的には核融合エネルギー利用の可能性もありますがこの技術の実用化までにはおそらく数世紀を要するものと見積もります。それまでの技術としては日本の優れた火力発電の活用が適切です。現在火力発電は石炭や天然ガスが燃料として使用されていますが、段階的に水素に移行することで水素火力発電と再生可能エネルギーのミックスでクリーンで持続可能なエネルギー基盤が実現します。水素火力発電はまだ研究開発段階ではありますが、このような社会を実現することが子供たちに夢と希望を与え安心して暮らせる社会の実現につながるものと考えます。これらの事業は一自治体の範疇を超えるものですが、この意識を普及・啓発することが今後の社会の方向性を決めるうえで重要になると考えます。前述の九州の水素供給基地化を進めるうえでも薩摩川内を含む南九州は実現のためのポテンシャルが高いものと考えます。


歳入・歳出の適正化による持続可能な財政基盤の確立

少子高齢化・人口減社会においては、教育・子育て支援、医療、介護費用などの増加で財政がひっ迫していくことは明らかです。持続ある財政基盤を構築していくためには歳入・歳出のバランスの適正化は重要な課題です。上記で述べた取り組みを実施し税収を増やすとともに予算の使われ方を詳細に分析し無駄を省き必要な個所に必要な予算が配分されるよう行財政改革に努めていく必要があります。


5 伝統・文化の保存継承と自然保護

薩摩川内市の各町、地域には伝統的な祭りや文化、そして風光明媚な自然が残されています。しかしこれらの伝統や文化は少子高齢化や人口減少が進めば忘れられ、過去のものとなっていく恐れがあります。また、自然保護についても人口の少ないところは例えば産業廃棄物の捨て場にされたりあるいは使用済み核燃料の中間貯蔵施設や最終処分場の候補地として取り上げられる可能性も出てくるのではないでしょうか。また、農業の担い手が減り、田畑はあれ山々も管理されず荒れ放題になれば、豊かな景観も失われ、一方、災害等の発生の原因にもなることが危惧されます。

故郷の伝統・文化の消滅、自然破壊の脅威から故郷を守ります。


伝統・文化の保存による地域の魅力化対策

コロナ禍が終わり外国人旅行者が増加してきています。最近の傾向として外国人旅行客は有名な観光地を訪れるほか、日本の伝統・文化、日本人らしい暮らしが残る地方への旅行者も増えてきています。今後益々、外国人旅行者の日本への訪問者数は増加するものと予想されています。薩摩川内市の各地に残る伝統、文化はこれから観光資源として重要となってきます。

しかしながら少子高齢化の影響で各地の伝統、文化は失われる危機に瀕しています。新たにDX等の技術を活用し伝統文化を記録し後世に残していく取り組みも必要です。また、地域自治会と行政が一体となり伝統的な祭りへの観光客や交流関係者等の参加を模索するなど関係者が知恵を出し合い新たな取組みをしていく必要もあると考えます。自治体の中には廃校を宿泊と芸術活動ができる施設へ改装し、国内外の芸術家が集まる芸術村を作っている事例もあります。そこでは芸術活動と人が集まることで新たな産業が興り移住者や交流人口が増えています。これらの事例も新たな芸術と伝統文化の融合など地域の活性化につながる有効な施策であると考えます。


インバウンドを含む観光客、交流人口の増加のための取組み

ドローンや空飛ぶ自動車などによるエアモビリティサービスの展開、観光資源の開発等を通じインバウンドを含む観光産業を育成していくことが必要となります。このなかで離島・山間地域の交通は絶対的に不足するためカーシェアリング、民泊制度の活用等をはじめ包括的・体系的に取り組んでいく必要があります。

また、人口減対策として移住者を増やす取組みも必要ですが、それ以上に関係人口を増やす取組みがより現実的ではないかと考えます。薩摩川内市出身の方でも都会での生活が長くなればなるほど故郷に移住することは大きな決断が必要となります。しかし実家等がある場合、定年退職後は都会の家と生まれ故郷の家を半年ずつ住み替えるというような生活スタイルを作ればより豊かな人生が送れるのではないでしょうか。そして薩摩川内市に居住する間は、シルバー人材として活躍できるようなスキームを作ることで薩摩川内市及び本人にもメリットが生まれます。このように新たな生き方を提案するのも有効な施策と考えます。


自然保護が確保された公共事業の実現

私の故郷の甑島も私が小学生のころに比べれば道路も舗装され生活もかなり便利になりました。しかしその一方で、雨が降ればすぐに海は泥水で濁り、真っ青な海が茶色に染められます。また、防波堤により貴重な自然豊かな奇岩が破壊されコンクリートで海辺は固められ、浜辺はテトラポットで埋め尽くされあの懐かしい浜辺は過去のものとなり二度と復活することはありません。防波堤を一方に作れば、残りの反対にはさらに高い波が来るため、さらに一方にも防波堤を作るかさらにテトラポットを設置しなければなりません。自然に反した開発はそれによる反作用を防ぐために更に開発が必要となるというように負のスパイラルが続くことになります。今後人口が減り、産業もない地域では公共工事の役割は依然大きいものと思いますが、環境を破壊するような今までの公共工事の在り方は、抜本的に見直していく必要があるのではないでしょうか。地球と自然と共生した新たな在り方を考えていく必要があるものと考えます。すでに各地で取組みが進められ自然と共生した公共工事や開発事業の実例が出てきています。


おわりに

以上が2025年~2050年を見据えた政策ビジョンです。未だ概論的なレベルですが、今後は市民の皆様の意見を反映するとともにさらに調査研究を進め政策を具体化していく所存です。また、現状の政策提言は、調査研究体制の不備などで認識の誤りや理解不足のおそれもあるため、適宜見直しを進めて参ります。

今後とも市民の皆様のご意見をお聴かせいただくとともにご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

2024年(令和6年)527
宮野 健一